フィジカルだけどプラトニック。ピュアな精神の結びつきに感動(坂本)
めちゃくちゃ大人の恋愛。ホセの言葉ひとつひとつが確実に素子に安心感を与えている(鈴木)
──攻殻機動隊シリーズには珍しい素子の恋愛エピソードが描かれていますね。
坂本 シリーズが始まった当初、黄瀬監督から素子の恋愛話もあるって聞いてすごく驚いたんです。あえて語られてなかった素子の女性の部分、それを描くなんて勇敢だなと(笑)。border:3はムードがあって大人っぽいんですけれど、ピュアな精神の結びつきに感動しました。フィジカルだけどプラトニック。両方大事だし美しいと思いました。
鈴木 めちゃくちゃ大人の恋愛ですよ。ホセの言葉ひとつひとつが確実に素子に安心感を与えている。シリーズを通して見ても、素子が心を許す相手っていうのはすごく限られているんですが、ホセは彼らの原点となる人物だったのかなと。
──恋をしている素子がとても魅力的ですが。
坂本 素子って、ずっと人間であろうとしてきた女性ですよね。恋人と付き合うこともポーズとしてやってはきたんでしょうけれど、本当に好きになった人はホセだというのがすごくわかるんです。普段はキビキビしていて冷静沈着、でもホセの前では急に甘えたりすねてみたり。そういった素子自身が無意識にやっているオンオフが出せたら、今までにない感じが漂っていいのかなと思いながら演じました。
鈴木 不意打ちを食らったような普通の女の子っぽい表情が出て来ますよね。味覚をメモリーに回されて、食べ物をおいしいと感じてびっくりした顔は少女そのもの。こんなちょっとした表情や彼女の仕草なんかが非常にかわいいんですよ。映画やTVシリーズの無機質でクールな素子を知っているだけに、今回のような一面が見られるのは財産だと思います。すごくかわいいし、でも一つ閉じこもったところのある愛おしさみたいな。
坂本 border:3を見た人は、きっとびっくりするでしょうね。恋愛と仕事を公私混同するような場面も出て来ますし。
──border:3は素子の恋愛エピソードとトグサが9課の一員となるエピソードが並行して語られる面白さもありますね。
坂本 勘を頼りに捜査を進めるトグサに対して、素子が感情を剥き出しにするシーンが印象的でした。相手がトグサだってところが重要なんじゃないでしょうか。ホセに対しては、全身義体同士だからこそわかり合える部分で惹かれたんだと思います。でもトグサって正反対でしょう。素子はトグサが自分にないものをいっぱい持っているということを、本能的に感じているんじゃないでしょうか。トグサにわかりきっていることを突っ込まれて、その苛立ちに自分でも制御できなくなってしまって。このことが、トグサをスカウトするターニングポイントの一つになったような気がします。
鈴木 素子もまだまだ成長過程だから、こういう一面が出たんでしょうね。
坂本 バトーやパズたち周りのみんなも面白いですよ。派手な動きはしていないんだけれど、それぞれの個性が良く出ていて。これまでの攻殻シリーズを知っている人が見ても、クスッとしちゃうようなところがいっぱい入っています。
──border:3の見どころをお願いします。
坂本 やっぱり、これまで素子についていろいろ想像してきたプライベートなんかが少し垣間見られるところでしょうか。今まで見たことのない、普通の女性と変わらない素子の素顔をぜひ見に来て欲しいですね。
鈴木 それに今回はトグサにもスポットが当てられるので、いろいろな側面で楽しめると思います。シリーズを通しての異色作だと思います。
取材:内藤啓二(shuffle.ltd)/文:山田尚美